火野葦平(ひの・あしへい/本名:玉井勝則)
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1907(明治40)年~1960(昭和35)年 小説家。福岡県若松市生まれ。早稲田大学中退。
1929(昭和4)年家業の港湾荷役業玉井組の跡目を継ぎ、労働組合を結成して港湾ゼネストを指導するも翌年逮捕されて転向。
日中戦争の応召前に書いた「糞尿譚(ふんにょうたん)」が従軍中の1937(昭和12)年、芥川賞受賞。
その後「麦と兵隊」・「土と兵隊」・「花と兵隊」の兵隊三部作で流行作家となる。
戦後は「戦犯作家」の烙印を押されたが、父母の伝記的長編の「花と竜」や「革命前後」により文名を回復した。
1960(昭和35)年、「或る漠然とした不安のために」自殺。
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※兵隊三部作:"War and Soldier"のタイトルで約20か国語に翻訳された作品であり、世界で最も読まれた日本文学の一つです。
※小説「花と竜」:明治から昭和にかけて、北九州市若松の沖仲仕(おきなかし:港湾労働者)の待遇・生活改善に一命を賭して取り組んだ自身の父母(玉井金五郎とマン)の姿を描いたもの。幾度となく、映画・舞台化された小説です。
※火野葦平と中村哲:パキスタン・アフガニスタンで医療や用水路建設などの人民救済活動を展開し、2019年に銃撃され死亡した中村哲(なかむら・てつ)氏は、火野葦平の妹の子。中村氏は生前、自身の活動には祖父・玉井金五郎から受け継いだ血が影響している、と語っています。